薄毛や抜け毛の悩みは、AGA(男性型脱毛症)だけが原因とは限りません。他にも様々な種類の脱毛症があり、それぞれ原因や症状、治療法が異なります。AGAの判断基準を考える上では、これらの他の脱毛症との違いを理解し、正確な鑑別診断を受けることが非常に重要です。まず、代表的なものに「円形脱毛症」があります。これは、自己免疫疾患の一種と考えられており、頭髪の一部または広範囲に円形または楕円形の脱毛斑が突然現れるのが特徴です。AGAのように徐々に進行するのではなく、比較的急激に発症し、時には眉毛やまつ毛などにも脱毛が見られることがあります。次に、「脂漏性皮膚炎に伴う脱毛」です。脂漏性皮膚炎は、頭皮の皮脂分泌が多い部位に起こりやすく、フケ、かゆみ、赤みといった症状が現れます。この炎症が毛穴に影響を与え、抜け毛が増えることがあります。AGAとは異なり、頭皮の炎症が主な原因です。また、「牽引性脱毛症」は、ポニーテールやきつい編み込みなど、髪を強く引っ張る髪型を長期間続けることで、毛根に負担がかかり、生え際や分け目部分の髪が薄くなる状態です。生活習慣の改善で予防・改善が可能です。「薬剤性脱毛症」は、特定の薬剤(抗がん剤、一部の抗うつ薬、高血圧治療薬など)の副作用として脱毛が起こるものです。原因となる薬剤の使用を中止または変更することで改善が見込めます。「甲状腺機能異常」や「鉄欠乏性貧血」といった内科的疾患も、びまん性の脱毛を引き起こすことがあります。これらの場合は、原因となる疾患の治療が優先されます。AGAの診断では、これらの他の脱毛症の可能性を排除するために、問診で既往歴や生活習慣、薬剤の使用状況などを詳しく確認したり、視診で脱毛のパターンや頭皮の状態を観察したり、必要に応じて血液検査を行ったりします。自己判断でAGAと決めつけず、専門医による正確な診断を受けることが、適切な治療への第一歩となります。