AGA(男性型脱毛症)の治療に用いられる代表的な薬剤には、フィナステリド、デュタステリドといった内服薬と、ミノキシジル外用薬があります。これらの薬剤は、それぞれ異なる作用機序でAGAによる脱毛にアプローチし、進行を抑制したり発毛を促したりする効果が期待できますが、その過程で脱毛に関連する現象が見られることもあります。まず、内服薬であるフィナステリドとデュタステリドは、AGAの原因物質であるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑制する働きがあります。DHTは、毛母細胞の働きを弱め、ヘアサイクルを乱して成長期を短縮させることで脱毛を引き起こします。これらの薬剤によってDHTの量が減少すると、毛母細胞への攻撃が弱まり、ヘアサイクルが徐々に正常化に向かいます。その結果、髪の毛が太く長く成長しやすくなり、抜け毛が減少し、薄毛の進行が抑制されるのです。ただし、これらの内服薬を開始した初期に、一時的に抜け毛が増える「初期脱毛」が起こることがあります。これは、休止期にあった古い毛髪が新しい毛髪に生え変わる過程で起こる現象と考えられています。次に、外用薬であるミノキシジルは、頭皮の血行を促進し、毛母細胞を直接活性化させることで発毛を促す効果があります。また、ヘアサイクルの成長期を延長させる働きもあるとされています。ミノキシジルを使用した場合も、初期脱毛が起こることがあります。これは、ミノキシジルの作用によって休止期にあった毛髪が成長期に移行し、古い毛髪が押し出されるために起こると考えられています。これらのAGA治療薬は、脱毛のメカニズムに作用し、最終的には抜け毛を減らし、髪の毛を増やすことを目的としていますが、治療の初期段階では一時的に脱毛が増えることがあるという点を理解しておくことが重要です。効果を実感するまでには数ヶ月から半年程度の継続的な使用が必要であり、自己判断で中断せずに医師の指示に従って治療を続けることが大切です。